重症急性膵炎の死亡率は、2007年の全国集計では8.9%となっており、 そのなかでも、最重症の急性膵炎では今でも30%以上と高い死亡率となります.
膵炎は上の図に示すように2つの山があります。膵炎の急性期、膵臓から漏れ出した膵酵素が膵周囲の炎症を惹起し強い腹痛をきたします。中にはそのまま全身状態が悪化しなくなる方もいます。1つ目の山を乗り越えてもその後、膵周囲にできた壊死巣や嚢胞に感染を来たし、内視鏡的や外科的なネクロゼクトミーなどの処置が必要になる場合も多いです。それでも感染の勢いが強いと亡くなる方も多いです。
膵臓ドレナージの方法には下記のようなものがあります
•内視鏡的 →経乳頭的ドレナージ •経胃的ドレナージ (内視鏡的ネクロゼクトミー 含む)
•経皮的 →エコー下ドレナージ •CT下ドレナージ
•外科的 →開腹ドレナージ
内視鏡的ドレナージ
ドレナージの適応については下記の図のように考えます。基本的には穿孔や出血などの合併症をへらすためドレナージはなるべく遅らせてしっかり被包化してから行うほうがよいとされています。ただし、感染がひどく状態悪化の可能性が高い場合は早めのドレナージを行います。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/59/2/59_155/_html/-char/ja より引用
6・6ルール
そのほかの処置の適応として「6cm以上で6週間経過した膿瘍は何らかのドレナージを必要とすることが多い 」という知見から6・6ルールというものもあります。内視鏡的にも膿瘍が小さいと手技が難しいことから6・6ルールをドレナージの適応とすることも多いです。
OʼMalley VP, Cannon JP, Postier RG. Pancreatic pseudocysts: cause, therapy, and results. Am J Surg 1985; 150: 680―2
LAMS(Hot Axios)とプラスチックステントの比較
LAMS(HOT AXIOS) | プラスチックステント | P値 | |
膿瘍消失まで(日) | 57 | 102 | P=0.02 |
ステント抜去まで(日) | 48 | 81 | P=0.01 |
ネクロゼクトミー施行 | 42% | 54% | P=0.24 |
ステント留置から退院まで(日) | 2.7 | 2.8 | P=0.9 |
Hot Axiosの適応
①胃壁または腸壁に密着している症候性仮性嚢胞
②胃壁または腸壁に密着している70%以上の液体成分を占める被包化壊死
留置部位
介在血管がなく、消化管壁と嚢胞壁があわせて10mm以内.液体貯留部が3-4cm程度デリバリーシステムが挿入できる部位を選択する。
実施医
①ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社(以下 BSJ)が提供する講習プログラムを受講していること
②ERCP関連手技とEUS-FNAの経験があり、膵局所合併症治療に関連する十分な知識を有していること 実施医療機関
①コンベックス型超音波内視鏡装置を有していること
②消化器関連学会の専門医であり、EUS-FNAの経験が1年以上かつ30例以上の医師指導のもとに行う
③偶発症が発生した際に迅速に対応できる外科医、放射線科医などを含めた診療体制をあらかじめ病院内に構築している施設で実施していること
留意事項
①AXIOS stentは60日以内か、膵仮性嚢胞または被包化壊死が消失した時点で抜去すること
②大きさが6cm未満の直径の嚢胞には安全性が確立していないため慎重に実施すること
HOT AXIOS 合併症
米国からはGardnerらが6施設、104症例の感染性 WONの検討で、偶発症は 14%に見られ、内訳は出血3例、後腹膜穿孔3例、腹膜炎 3例、感染 4例、空気塞栓1 例で、死亡例は1.9%であったとしている.
Gardner TB, Coelho-Parbhu N, Gorodon SR et al. Direct endoscopic necrosectmy for the treatment of walled-off pancreatic necrosiss : result from a multicenter U.S.series. Gastrointest Endosc 2011;73: 718-26
対策
・CO2で行う
・凝固や血小板の確認 •洗浄も必要になるため体位の工夫(腹臥位など)
•出血した場合大量になることもあるため止血の処置準備とすぐに放射線科Drへ連絡がつく状態にしておく
•ENBDチューブは、洗浄しないと壊死組織が固くなってしまうため可能な限り行う
•CO2にしていても完全には空気塞栓は防げない。長時間の手技は避ける
まとめ
・内視鏡的ドレナージは有効的な処置だが合併症も多い
・急変の可能性も考えながら処置、看護を行う必要がある
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