経口バンコマイシンを2次予防としてCDI(Clostridioides difficile Infection)に使用するか

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何度も偽膜性腸炎を繰り返す患者さんが、入院患者にもいますよね。

UTIなどで入院したときに抗生剤で治療する際に、予防的にバンコマイシン投与してみたら、CDIを予防することができるんじゃないかと思うことが、ときどきあります。

NEW ENGRADND JOURNAL  に記事があったので紹介します。CLINICAL DECISIONという、症例を提示し治療Optionに対して、専門家が意見を解説するというスタイルの記事です。

症例は72歳女性、UTIで頻回に抗菌薬暴露のある方です。3ヶ月前にも非重症のCD腸炎になり治療歴がありFidaxomicinで治療された既往があります。

 その方が今回UTIで再度入院となりCeftriaxionで治療することになりましたが、予防的にバンコマイシンを内服させるかどうかというDiscussionとなります。

普通、日本の臨床では予防的に投与は行っている状況をみたことはありませんが、バンコマイシンを入れるか入れないかの意見がのっていました。

ちなみに、一度、病気を発症した方の再発予防のことを二次予防といいます。健康な人に発症予防することを1次予防といいます。

#バンコマイシンを入れる派

Jessica Allegretti, M.D., M.P.H 先生の意見

CDIは20%の症例で繰りかえすといわれており、再発することで命に関わる重症の感染を来す可能性のある患者には予防が推奨される。

 ACG( American College of Gastroenterology)のガイド ラインにも繰り返すリスクの高い患者に全身抗菌薬投与を行う場合、条件によっては経口バンコマイシンは予防薬として推奨されると記載がある。

 いくつかの後方視研究がエビデンスを出しており、CDIの既往のある患者に全身抗菌薬使用時にCDI予防として、バンコマイシンを投与すると、CDIの再発を予防できたとしています。

 最大の研究では557人の患者に、30日後までのCDI感染リスクを調べ、227人の患者に平均7日間のバンコマイシンが投与され、投与された症例ではCDI感染が有意に低いことがわかりました(number needed to treat to prevent one infection, 7; P<0.001)。

他の後方視研究では、過去に1回発症したことのある患者において、対照群と比較して経口バンコマイシン予防投与群でC. difficile感染症の再発が減少したことが示された。

 最後に、一次予防または二次予防のための経口バンコマイシン予防投与を検討した9件の研究のメタアナリシスでは、経口バンコマイシン予防投与を受けた患者では、対照群に比べてC. difficile感染の再発が少なかったことが示されました(オッズ比、0.24;95%信頼区間[CI]0.13 to 0.48)

  サンプルサイズが小さいこと、経口バンコマイシン予防薬の用量と期間がさまざまであることや、レトロスペクティブデザインであることがlimitationではあります。

 しかし、経口バンコマイシンの全体的な安全性プロファイルを考えると、適切な患者においては、予防薬の利点はリスクを上回ると考えられ、C.difficile感染症で最近治療を受け、その後全身性抗生物質による治療を必要とする高リスクの患者には、経口バンコマイシンの予防投与を考慮する必要があります。

 高リスクの患者とは、65歳以上の患者、著しい免疫不全のある患者、過去3ヶ月以内に重度のC. difficile感染症で入院した患者などが含まれます。

  冒頭の患者のように高齢でリスクの高い患者であれば予防投与は許容されると考えられます。

#入れない派

Andrew M. Skinner, M.D., Erik R. Dubberke, M.D., M.S.P.H.

先生の意見

C. difficileは米国における医療関連感染主要な原因であり、臨床医と病院はそれを防ぐための戦略を絶えず模索しており、戦略の1つとして、患者が全身性抗生物質を投与される際の二次予防として経口バンコマイシンを使用などが模索されています。

 経口バンコマイシンはC. difficile感染症の治療に有効ですが、二次予防としての経口バンコマイシンの使用のエビデンスが少ないため、2017年の米国感染症学会および米国医療疫学学会(IDSA-SHEA)のC. difficile感染症の臨床実践ガイドラインでは、明確な推奨はありません。

 二次予防としての経口バンコマイシンに関する懸念としては、経口バンコマイシンが腸内細菌叢に破壊的な影響を与え、将来のC. difficile感染症のリスクを高める可能性があることと、このアプローチを支持する良質なエビデンスがないことが挙げられます。

経口バンコマイシンは腸内細菌叢を壊滅させる作用があります。それは、第三世代セファロスポリンよりも細菌叢Firmicuteの枯渇を引き起こします。FirmicutesC. difficile感染の予防に重要な役割を果たすと考えられています。

 ヒトを対象とした研究では、経口バンコマイシンを他の抗生物質と一緒に投与すると、他の抗生物質によって引き起こされた以上に腸内細菌叢に混乱が生じ、それがさらに、抗生物質を中止した後の細菌叢回復の遅延や、抗生物質耐性菌発生を助長することが示されています。

 このような腸内細菌叢のさらなる破壊は、経口バンコマイシン予防投与を中止した後のC. difficile感染症のリスクを実際には増加させる可能性があります。

 C. difficile感染症の治療に経口バンコマイシンを使用した場合高い再発率を認めるが、それを説明するものといえます。

このように、経口バンコマイシンによる二次予防を中止した後の患者の慎重なモニタリングが、その真のリスク・ベネフィットを評価するために必要となります。

さ らに、二次予防として経口バンコマイシンを使用することを支持する、質の高いランダム化比較試験データは現在ありません。

 この治療法に関する既存の文献にはバイアスが多くあり、すべての研究ではありませんが、多くの研究で、経口バンコマイシンによる二次予防は治療中のC. difficile感染リスクを低減する可能性が示唆されています。しかし、これらの研究では、経口バンコマイシンを中止した後の患者を十分に追跡調査していないことが多い。このようなデータがないため、患者がC. difficile感染のリスクを高める重要な経時的フォローアップが不十分です。

 バンコマイシン経口投与による二次予防のリスク・ベネフィットを考慮する際に留意すべき点として、この患者にはUTIの再発歴があるがCDI1回のみで、そのエピソードに対して3カ月前にFidaxomicin治療を完了したという事実が挙げられる。

 マイクロバイオームの回復は、抗生物質の投与中止後すぐに始まります。患者が、経口バンコマイシンよりも腸内細菌叢を温存する薬剤であるFidaxomicinの治療を3カ月前に終了したことを考慮すると、今回のUTI治療によるC. difficile感染のリスクは、以前にC. difficile感染を起こしたことがない場合よりも高くならないはずです。予防的投与による新たなマイクロバイオームの破壊のリスクと、レジメン中止後のC. difficile感染のリスクが、UTIの治療中のCDI感染を予防する利益を上回ると考えています。

C. difficile感染症の予防は、依然として重要な課題です。経口バンコマイシンは、セファロスポリン単独よりも腸内細菌叢を非常に破壊するため、理論的には、バンコマイシンを中止した後のC. difficile感染のリスクは、バンコマイシンの投与がなかった場合よりも高くなる可能性があります。バンコマイシンによる二次予防後のC. difficile感染防止には、漸減してもメリットがない場合もあります。これらの要因を考慮すると、ランダム化された良好な対照試験(例えば、ClinicalTrials.gov number,NCT03462459)の結果を待つ間、この患者に対する二次予防として経口バンコマイシンを使用しないことを推奨します。

まとめ(私見)

私の個人的な意見ではやはり現時点で予防的VCMは推奨されないかなと思いました。

 リスク高い患者さんにオプションの一つとして引き出しにしまっておく分にはいいのかなと思います。

VCMが腸内細菌叢にそこまで影響するとは知りませんでした。

Fidaxomicinはそこまで使用経験がないのですが、VCMよりは使いやすそうだと思いました。

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