小腸の病変を精査する際にMR enterograpyは簡便で有用と思われるが、あまり経験がないため調べてみた。
MR enterograpyとMR enteroclysis
まずMR enterograpyとMR enteroclysisの違いについて。
MR enterograpyは経口でポリエチレングリコールを内服 MR enteroclysisはチューブを挿入しポリエチレングリコールを内服する。
MR enteroglaphyのほうが簡便であり、MR enterograpyを行うことが多い。
今回はMR enterograpyの手順についてまとめる。
MR エンテログラフィーの手順
前日夜 マグコロール内服
当日MRI検査1時間前に30分かけてニフレック1Lを内服
MRI撮影
①Balanced steady state free precesion環状断像、横断像
②ブスコパン静注後、T2強調画像 Single shot fast spin echo(SSFSE)冠状断像
③脂肪抑制併用T2強調single shot fast spin echo冠状断像
④ガドリニウム造影剤静注(2mL/sec)前後,T1強調3D gradient echo冠状断像(0sec, 20sec, 70sec),横断像(dynamic後)
⑤拡散強調,冠状断像
⑥T1強調3D gradient echo冠状断像(遅延相8min)
MRI後 追加のニフレック内服し、大腸内視鏡やバルーン内視鏡を行う
参考)胃と腸、MR enterography 竹中 健人 , 藤井 俊光 , 大塚 和朗 , 岡本 隆一58巻11号 , 2023年11月 , pp.1491-1498
小腸ポリープの検出は?カプセル内視鏡と比較
ここでは小腸ポリープの検出についてカプセル内視鏡との比較試験の結果を2つ提示する。
R Casoariらは4名のポイツジェガース症候群(PJS)の患者と16名の家族性大腸腺腫症(FAP)の患者にMRIを施行し、その翌日、カプセル内視鏡を施行し、小腸のポリープの検出を比較した。
カプセル内視鏡では1mm〜30mmのサイズの448個のポリープが指摘された。一方MRIではすべて5mm以上の24個のポリープが指摘された
15mm以上のポリープはカプセル内視鏡でも、MRIでも同様に検出された。5mm以下のポリープはカプセル内視鏡でのみ検出されたが、ポリープの場所や、正確なサイズについてはMRIの方が正確であった。
(抄録だけしか読めず、MRIなのかMR ennterographyなのか不明)
参考)Caspari R, . Comparison of capsule endoscopy and magnetic resonance imaging for the detection of polyps of the small intestine in patients with familial adenomatous polyposis or with Peutz-Jeghers’ syndrome. Endoscopy. 2004 Dec;36(12):1054-9. doi: 10.1055/s-2004-826041. PMID: 15578294.
Arunらは成人のPJSのCapsule endoscopy(CE)とMR enterography(MRE)でポリープの検出率を比較した。
19名の患者に両方の検査を行った。
>10mmのポリープについてはCEでは18個、MREでは23個検出され(p=0.35)、検出された患者は8人と11人(p=0.38)明らかな差異は認めなかった。
しかひながら 大きいポリープ(>15mm)の場合は3名の患者においてMREでポリープ指摘されたが、CEでは検出されない事例があった。
>15mmのポリープはCEでは6人に、MREでは9人で検出された。
検者間一致率はMREで高く、CEで低かった(Kappa=0.81 vs 0.27)
患者の苦痛はCEでより少なかった。
*この報告でのMR Enterograpyの手順
当日はClear fluidsのみの摂取として、最大1.5L2.5%マンニトールと0.2% locust bean gum(対応する日本の薬品なし?増粘多糖類?)の 経口造影剤を撮影1時間前から内服する。20mgのButylbrominde(ブスコパン)を2回使用する(半減期が短いため)
参考)Gupta A, Postgate AJ, Burling D, Ilangovan R, Marshall M, Phillips RK, Clark SK, Fraser CH. A prospective study of MR enterography versus capsule endoscopy for the surveillance of adult patients with Peutz-Jeghers syndrome. AJR Am J Roentgenol. 2010 Jul;195(1):108-16. doi: 10.2214/AJR.09.3174. PMID: 20566803.
まとめ
本稿ではMRエンテログラフィーの有用性について解説した。
MREでは細かい病変は苦手だが、症状をきたしうる大きな病変のスクリーニングと位置の確認には優れている。
ポリープの重積予防がメインとなるポイツジェガースなどのポリポーシスには有用と思われる。
また、狭窄などがありカプセル内視鏡が行えないクローン病などの小腸病変検索、評価にも有用と思われる。
参考URL
http://www.ibdjapan.org/for_medical/pdf/doc05.pdf
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