マニアックですが、
鉛中毒も腹痛の原因となります。所見に乏しいので疑わないと診断できません。
ポルフィリン症のような症状をきたします。
ポルフィリン症があまり馴染みがありませんが、ポルフィリン症の症状は光線過敏(日焼け、熱傷様症状)、消化器症状(激烈な腹痛、下痢、便秘、嘔吐、肝不全)、神経症状(痙攣、麻痺、意識障害)が主である。一度発症すれば、これらの症状は生涯続くといわれています。ポルフィリン症は家族歴があったり、若年での発症が多いようです。
原因不明の腹痛が外来に来たときに鉛中毒も疑えるようにまとめておきます。
<病歴>
住環境、職業(バッテリー、古い塗料、建物解体、鉱山)、子供の(塗料や)誤飲。
サプリメント、調理器具、食器、化粧品、体内に残存した銃弾、密造酒、麻薬。
最近当院でも、サプリメント(お○んちんを大きくするサプリメント)を飲んで鉛中毒になっている人がいました。
下記文献ではアーユルベーダの薬に鉛が入っていた症例です。
<検査>
血中 鉛
尿中 鉛
δ-アミノレブリン酸(δALA)
コプロポルフィリン (170以下) μg/gCre
ウロポルフィリン (36以下)μg/gCre
鉛濃度が上がると血中濃度に応じt下記のような症状がでます
- 30−50μg/dl 倦怠感、イライラ、頭痛
- 70μg/dl- 貧血、便秘、腹痛、末梢神経障害
- 100μg/dl- 脳浮腫、脳症、意識混濁、死亡
<病態>
ヘムを作る過程で鉛が ALA dehydrataseを始めとする酵素を阻害し、ポルフィリン症のような病態をきたすことが原因となる。
<治療>
・サプリなどの原因を排除する
・中毒症状がありPbBが70μg/dLを超える成人ではキレート化
・脳症が認められるか,またはPbBが45μg/dL(2.15mmol/L)を超える小児ではキレート化
・エデト酸カルシウムナトリウム水和物(ブライアン)
通常成人1日1〜2gを2〜3回に分けて、食後30分以上経ってから経口投与する。最初5〜7日間服用し、その後3〜7日間の休薬期をおきこれを1クールとし、必要あれば、これを繰り返し行う。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
・ジメルカプロール(バル)
通常成人1回2.5mg/kgを第1日目は6時間間隔で4回筋肉内注射し、第2日目以降6日間は毎日1回2.5mg/kgを筋肉内注射する。
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NEJM のMGHケースレポート
76歳女性、腹痛、体重減少、記憶障害
入院の2ヶ月前より心窩部痛と食思不振、便秘の訴えあり。
上下部内視鏡では異常なし。
入院15日前から腹痛悪化、食指不振あり、10日前に前医に入院。
貧血様、腹部軟、圧痛なし。意識は清明で、場所や時間、人の判別は可能だったが、失語を認めた。
血液検査では正球性の貧血と間接優位のビリルビン上昇あり。
尿中ウロプロポルフィリン、尿中コプロプロフィリンが上昇。
鉛濃度も104μg/dlと高値。
鉛中毒と診断した。
ヘミンとDSMAで治療され改善した。
インドに住む娘が、体調を気遣って、アーユルベーダの薬をのませており、それによる鉛中毒の症例であった。
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